7月 園便りより

古い園舎を建てかえる際に、鹿児島市内のいくつかの幼稚園や保育園の園舎を見学させてもらった時のことです。園舎とともに園の様子も説明してもらったりして、それぞれの園がいろいろな工夫をしているんだなぁと感心しました。その中で、他の学校も経営しているような大きな法人の規模の大きな幼稚園の園長先生からこんな言葉をもらいました。「カトリックさんはいいよね。モンテッソーリ教育があって。」ちょうどその頃は認定こども園の制度が始まったばかりの頃で、幼児教育保育の制度や環境に大きな変化があったときでした。幼稚園と保育園の垣根が取り払われて、幼児教育や保育の質とサービスが改めて見直され始めた時でした。そんな中で「モンテッソーリ教育」という教育の質の部分でゆるぎない特色をもっていたことを羨んでの言葉だったのかもしれません。

1900年代当初にうまれたモンテッソーリ教育ですが、100年余りの歴史があり、欧米を中心に世界中で実践されています。医学博士であったマリアモンテッソーリが、知的発達障害児の療育施設での教育実践を出発点に人類学や脳生理学等に基づいて考案された教育法です。日本では戦後に普及し、一部では知的能力を上げる・お受験対策のための英才教育・早期教育と誤解されている点もあります。しかし、その出発点からも分かるように、どのような子どもにも普遍的にある育ちの本質をとらえて、科学的な視点からも構成されている教育法で、平和な社会に貢献できる人格形成を目的としています。子どもが本来持っている「自分で育ちたい」という思いを尊重し満たされると、円満な人格・心が育っていくのです。マリアモンテッソーリが後年ノーベル平和賞に何度もノミネートされたのも、教育を通して子どもの尊厳と世界平和の実現を目指していたからです。その子の個性・能力を引き出すという面はその人格形成の中での一つの側面であると言えます。

教育界もこの十数年ぐらいで大きく変わってきています。従来続いていた知識を習得していく受け身の授業から、自ら考えたり話合ったりして「主体的に」学んでいくアクティブラーニングが重要視されています。特別な支援が必要な子も「合理的な配慮の元に他の子と一緒に」学ぶインクルーシブ教育だったり、子どもは主体的に「遊びこむ」ことで育っていくことが大切だと言われるようになったり。

これらのことはモンテッソーリ教育とそのための縦割りクラスの中で、既に以前から大切にしている事です。私たちは子どもの自由で主体的な活動を大切に捉えて「お仕事」と呼びますが、子どもが自分で自分を作っていく「お仕事」がいつでも出来るように、お部屋の中に一人ひとりの発達段階に合うように様々な教具を用意しています。お部屋以外の子どもが活動し生活する園全体でも同じ考え方で、子ども自身が自分の事は自分でして生活出来るように整えています。縦割りクラスでの生活でいろいろな発達段階の子がそれぞれ助け合いながら同じように過ごし、当然支援が必要な子も何の違和感もなく、その中の仲間の一人として、一緒に育ち合います。この中で、子どもたちは自分がしたいと思う活動に没頭し、その生活と活動の中で自分を作り上げていくのです。

モンテッソーリ教育を園できちんと実践していくには、教具や用具をそろえたりして園内の環境構成から整えることも必要ですが、その理論を学び、教具や用具の使用方法・子どもへの提供方法を保育者が習得する必要があります。周りの大人が子どもの発達とその関わり方を学び直すことが大切です。物的な環境を整えていくことも大切ですが、人的な環境・保育者の考え方・子どもの捉え方・関わり方を養成していくことが最も重要なのです。園では、外部の養成コースへの職員派遣を始め、各種の外部研修や園内研修等を重ねて一層の質の向上を図っているところです。

でも実は、その子どもの捉え方や関わり方を学んで実践していけば、ご家庭でもモンテッソーリ教育を基にした子育ても十分に可能です。子どもにとっては、一番身近にいる親が、今の自分を認めてくれて「自分でするのを手伝って」くれること・尊厳と自由を保障してくれることが、何よりの幸せだと思います。幼児期は人格形成にとってとても大切な時期です。子どもが自分で育つのを一緒にお手伝いしましょう。